パソコンの身になってみる。という本
前回のブックレビューは『検索バカ』という本でした。

ネット検索と空気読みは一緒にすすんできてるとか、
ネット検索だけでなく自分で考えることも必要だよ、とか、
そういうことが書いてある本でした。

それに対して、私は
「ネット検索をするときって、こっちがネット側の情報発信者やデータベースの都合に
あわせなきゃいけないんだよね、良くも悪くも」的なことを書きました。

ネット側の情報発信者やデータベースの都合にあわせる、ということについて
書いたついでに、今日はパソコンの本について。正確には、コンピュータの本について。

「パソコンの都合」について知っておけば、ちょっとずつでも
パソコンを使いこなせるようになるかもよ。というより、パソコンをもっとがっつり
自由に使うためには、「コンピュータのしくみ」や
「パソコンの都合」を知っておくと応用がきくよ。

ということを説明してくれる本がありました。こちらです。

新教養としてのパソコン入門 コンピュータのきもち新教養としてのパソコン入門 コンピュータのきもち
(2002/09/18)
山形 浩生

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わたしは、「はじめに」の文章のここのところで、
「わ、なんか面白そう」と思いました。以下、色違い部分が引用です。


コンピュータ―特にみんなの使っている
パソコンという汎用のコンピュータ―のむずかしさの一つは、
それが特に明確な目的を持たないことだ。
コンピュータを買うにあたっては、目的意識をはっきりさせましょう、
と言うのは簡単。
でも、パソコンの価値は、実は目的がはっきりしていないことにあったりする。
特化していないからこそ、なんにでも使えて、
だからこそそこにはいままでの道具にはなかった価値がある。
でもその一方で、人は「何でも好きにしていいよ」と言われるとまごついてしまう。
その結果、コンピュータのとっかかりでの人の会話は
「何がしたいの?」
「何ができるの?」
「それはいろいろあって人それぞれだから何がしたいの?」
という堂々巡りの会話が繰り返され、
さらに「できる」というのと「すぐにできる」のとはちがう、というのが相まって、
多くの人はフラストレーションと混乱と、
怒りと無力感のごった煮にたたきこまれることとなる。
 するとじゃあ、その堂々巡りの会話をすこしでも生産的な方向に
持っていってやろうじゃないか、というのがこの本の発想だと言おうかな。
コンピュータの側から、もっと何ができるのかをはっきり出してやろう。
それも、カタログスペックを並べるだけじゃなくて、
その根底にある発想を見せることで。



…そう。そう!!そーなんだよーっ!!!
私もパソコンがいよいよ必要になったとき
詳しい人に相談したのですが、
「何をするために使うの?」って聞かれて絶句したもん。
何をするためにパソコンが必要なのかはわからないけど、
パソコンがないとものすごく不便な環境になるだろうな、ということだけは
目に見えてわかっていたのです。
だからパソコンを用意せざるを得ない…しかし適当に選んでいいものではないらしい。
やっぱり、「何がしたいの?」「何ができるの?」の禅問答になってしまった。
私が今使っているパソコンはIBMのものです。
「あとで必要に応じて外付けの機器をつけたりソフトを組み込んで行けば
最終的になんでもできるようになるよ!」
と詳しい人が言うので、そうなのかと思ってそのまま見立ててもらったんです。
その結果、
確かに、どうやらパソコンはいろいろできるらしい。ということがわかってきたものの、
いざやってみたいことができたときにどんな機器やソフトをどうやって選んで
どんな手順で組み込んだらいいものか、
こんどはそこがさっぱりわからなくなってしまった。
そうしてるうちに使う機能がすごく限定されてきた。いまや私のパソコンは
ほぼ「ネットが見られるワープロになんとエクセルもついてきたって感じ」だ。
しかもそれでまったく不自由はしてない。
仕事でパソコンを使うときはほぼ「データベースで蔵書検索」と「文書作成」だ。
あと、年末に統計をとる仕事がまとめてくるのでそれをエクセルでやって、それですべて。



パソコンがあって、文書がつくれて、その文書に図表もいれることができて、
表計算ができて、パワーポイントでプレゼンもやったことがあったりして、
動画共有サイトやインターネットのサイトを見ることができて、メールも送れる。
ウイルス対策ソフトも入っている。そしてそれらをちゃんとアップデートだってしてる。
やばげなファイル共有ソフトも持っていない。
だから、仕事のうえではちっとも不自由しない。
パソコンは「できるシリーズ」の本とか「超図解シリーズ」の本とかを見ながら覚えた。
それらの本に書いてあった以上の(以外の)ことはこわくてできない。というか、する気がない。
パソコンとかコンピュータのこみいったことを覚えないと困る、という
せっぱつまった状態ではないから、
パソコンってなんか融通がきかないところがあるよなぁ、とは
たまに思うようになってきたけど、深く気にしたりはしない。

という人にとっては、すごくおもしろいと思います。

コンピュータはどうしてめんどうでわかりにくいのか?という話から始めてくれるので
中級者になれないでいる初心者にやさしいつくりになっているようです。
まったくの初心者はむずかしいだろうな、という内容です。
上級者はツッコミをいれやすいだろうな、という内容です。たぶん。

私は、ネットワークの原理について書かれた8章めの
「コンピュータのネットワークは、貧乏くさいのである」

11章めのプログラミングの話
「コンピュータにとっては、あなたも一介のソフトウェアでしかないのだ」

12章めの「ちがう字?同じ字?文字化けと文字コードのあれこれ」
特に「へぇー!」と思いました。

ほか、CPU、周辺機器、プロトコル、ファイルとフォルダ…がいったい
どんな発想をもとにしていてどういうしくみなのかの説明が読めます。
脚注もあるから参考になるよ。
それからこの本、番外編が、考えさせられる。

番外編は「著作権を尊重しすぎるのは、本来の趣旨に反することなのだ」
というちょっと大胆なタイトルがついています。
これはコピーと知的財産…著作権とかね…について著者が
自分の考えを述べた文章なのですが、これがなかなか考えさせられます。
ここもちょっと本文をひいたほうが読みやすくなるかなぁ…例えば、こんな感じ。




“知的財産というものを考えるにあたって、絶対におさえておくべき基礎がある。
それは、知的財産というのが基本は人類全体の財産だということだ。
知的財産、つまり情報はいくらでもコピーできて、いろんな人が同時に使える。
ぼくの知っていることをあなたに教えても、ぼくの知識は減らない。
そしてぼくが知っていることをあなたに教えれは、あなたとぼくとが同時にその知識を
使っていろんなものを生産できる。その知識を知っている人が多ければ多いほど、
生産できるものは増える。” (P194より)

“だれも、何もないところからなんかものは作れない。
いろんなインプットがあってこぞはじめてモノづくりは可能になる。
(中略)アーティストと称する人たち、クリエーターと称する人たちだって、
いろんなところからいろんな材料をもらって、
その基盤の上で新しいものを作っている。
中にはかれらがお金を払ったモノもあるだろうけれど、
そうでないものも無数にあるはずだ。”(P200より)

“『12モンキーズ』という映画は、どこぞのデザイナーが
「映画の中にオレのデザインした椅子のスケッチに似た椅子が無断で映っている」
とゴネたために公開が中断したりした。『バットマン・フォーエバー』は、どこぞの建築家が、
画面に映った庭のデザインが自分の設計によるものだというケチをつけて、
公開が遅れそうになったそうな。
 こんなのが本当にいいことだろうか?こうやって権利を守ることで、
新しい映画が生まれるようになるだろうか?映画作家たちは、
「これで安心して映画が撮れる」と思って新しい映画をどんどん作るようになるだろうか?
まさか。
(中略)
だって面倒だもん。こわいもん。どこでどんなものが映るかわからないし、
許可が取れるかわからないし、見逃したら訴えられるかもしれないし。(P202より)

“残念ながら、著作権を弱くすることでメリットをこうむるのは、未来の人、
これから出てくるアーティストや視聴者たちだ。
それを強くして儲かるのは、既存の著作権保持者だ。
後者は金もある。組織もある。前者は、いまはだれかさえわからない。”(P203より)





以上、色違い部分が引用でした。
著作権についての本は「どこまでが著作権的にOKでどこからがNGなのか?」とか
「こういう利用の仕方は違反してないか?」
「うっかり違反しないようにするにはどう考えたらいいのか?」を解説する本のほうが
多く出ているようなので、なるほどそういう考え方もあるのかぁ…という感じで
新鮮でした。でも、この著者が主張する考え方が全面的に正しいかどうかは、
わたしはもう少し考えないと判断できません。
12モンキーズの例やバットマンの例をみれば「うわぁ…これはちょっと」だけど
道端でごく普通に売られている海賊版や某国の遊園地みたいなのを見ると
やっぱりあんなに大胆にコピーしちゃうのもどうかと思うし。
もうこれはバランスとケースバイケースの問題なのかなぁ、というのが
今のわたしの考えです。なんにしても極端はまずいよ、
でもってバランスをとるのはむずかしいよ…。
著作権。守られすぎも守られなさすぎも問題なんだな、と思いました。


【2009/01/14 22:28】 | この本、読んでみました | コメント(0) | page top↑
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